Mag-log inこの世界にも四季がある。
暦は一年を4節4期で表す。一期は90日、一週間は10日で、「前陽の3週5日」等と表す。
王都からログアード辺境伯領都アセムまでは馬車移動で約20日の旅となる。 コネリー大司教主席枢機卿、アンドリア王太子を筆頭とする訪問団が到着したのは 前陽の中頃。麦の穂の稔りが揺れる初夏の事であった。
***
明日から5日間は王都からのお客様を御もてなしするために諸々の授業はお休み致します。
今日はその準備ですの。 もう「あと何着有りますの?」
早朝から十数着と衣装を合わせ、その度に髪型も結い直すものだから首も肩も限界ですわよ!
髪の毛って重たいですわぁ~ おまけに髪飾りデコるからグラグラするのよね。 久々に首が座らなくなりましたわ。 赤ちゃんのとき以来ですわね。 覚えていませんけれど。「三着で御座います。姫様が主役ですもの、
ダモンの威信を賭けてお披露目する様にと大奥様より仰せつかっております」ルルナのコスチュームは、動くたびに見えるパンツと食い込みが問題視されて
「これは魔法少女ではありません!」
と終始不満げでしたが、ステッキは断固として離さなかったですわね。「若様がお戻りになられるのは一年ぶりで御座いますね。
弟様はようやく衣装合わせが終わりましたので、皆でお茶を頂いております。
オルエルトお兄様とフリスタスお兄様は双子の兄弟ですの。 オルエルトお兄様は陸軍に、フリスタスお兄様は海軍へとお進みになられました。 オルエルトお兄様は訪問団の一員ではありませんが、 王太子殿下のお口添えで随行を許されたとの事ですわ。「
マルガリテは事も無げに言うけれど私は心配でなりませんの。
海賊の体裁を取っていますが、帝国の支援を受けた非公式の半軍隊ですわ。 唯のならず者では無いもの。 おそらくは正規の軍人も混じっているでしょうね。 表向きは野良の海賊で通しているから抗議しても無駄ですのよ。 バレバレですのにね。さても明日に備えて早めにお休みさせて頂きましょう。
女中のエミリとアリスがルルナから剥ぎ取ったフリフリ紐パンツを***
遠い昔に4人の精霊の落とし子が生まれ、この世で最初の契約者となった。
彼らは世界中を旅して廻り、精霊の言葉と文字を人の世に伝えた。 彼らの死後、知識と技を受け継いだ弟子達が教団を組織し、 民の救済を掲げたのが精霊教会の始まりとされている。今、教会の代表としてダモンの地を訪れているコネリー大司教主席枢機卿は、
使命の重さと伝説の再来に立ち会う感動に震えていた。***
昨日は朝からお城の中央広場で訪問団の歓迎式典が行われましたの。
皆様ルルナとお話がしたいご様子でしたが、 当のルルナが超然と無視するので気まずくなってしまいましたわ。 少しくらいは気を利かせなさいよね! お母様が上手にフォローしてくれましたから良かったものの、 さすがにお客様に対して失礼ですわよ。 田舎者と陰口されるのは癪ですわ。午後からは王太子殿下をお招きして、お祖母様主催のお茶会が開かれましたの。
親戚同士のお茶会なので、殿下も“魔女っ娘ピックル”ですわねぇ~
ゆびゆび立ててマハーロのターマリでフーランペですわぁ~夜は舞踏会が開かれましたが、その前に私はお
今日からは午前と午後に一組ずつ、お父様同席の上で会談が行われますわ。
一番手は精霊教会の大幹部との面会ですわね。 交渉事はお父様にお任せすれば「単刀直入に申し上げます。公女様を教会にお預け頂きたく存じます」
え?私に出家せよと?「娘を差し出せと申すかっ!」
元陸軍中将だったお父様の射殺すような眼光に当てられて、大司教様の顔から血の気が引いていきますわ。 わ、私も身震いするほど「話をっ!話をお聞き頂きたいっ!公女様の為なのです!」
まるで命乞いをするような勢いで大司教様が言い「申してみよ!」
完璧なマウントですわお父様! 位では相手のほうが格上ですけれど、戦場を潜り抜けた迫力ですわね!「今からお話するのは教会の秘中の秘、決して口外なされませぬ様お願い致します」
大司教様は緊張して手が震えておられますわ。「承知した」
むっとしながらも只ならぬ様子にお父様は身構えておられますわ。「これで良いであろう。では秘中の秘とやらを聞こう」
あぁお父様・・・もう・・・
もう私・・・ お股が・・・お股が・・・「この事は教皇
祈りを捧げる様に
いきなりそんな“私の”だなんて~
もうお茶目さんなのだから~ 私のルルナは~「やはり!やはりご存じなのですね!あぁ・・・伝説が・・・」
大司教様が涙ぐんでいらっしゃいますわ。
お年を召された方に泣かれると虐待している様で心が痛みますわね。 加害者扱いされたらたまったものではありませんわ。「四始祖様は救世主では無いのかい?詳しく聞かせて貰えないだろうか」
打って変わって包み込む様な優しい眼差しでお父様がルルナに問いかけましたの。
その微笑みは私だけのものでしたのに・・・ まぁルルナなら許してあげましょう。 さぁルルナ、お父様がご「彼らは人型精霊との契約を可能とする為に用意された器でした」
おやぁ?
もしや転生者ではありませんこと?「特別な器と言う事なのかい?」
「ある程度の条件は有りますが、特別と言う程ではありませんよ」 「そ、それはどの様な条件で御座いましょうや!」あまり興奮なさいますとお体に
「貴方が知る必要は有りません」
「も、申し訳御座いませぬ。どうかお許しを・・・精霊王様」あら?いつの間に精霊王になったの?
***
教団は四始祖達が自ら組織し、当時からかなりの規模であった。
富と権力を手中にした彼らは互いに反目し、 やがて争いは果てしなく続くかに思われたが、四人の内二人が手を組み、
他の二人を討伐した事で収束した。 再び統一された教団は精霊教会と名を改め、二人は初代の教皇と大司卿に就任した。その死後、教会を受け継いだ高弟達は、徹底して事実を隠し歴史を書き換えた。
数千年の時の流れに削られて人々の記憶から真実は消えた。 教会の最奥を除いて。 と言うストーリーが幹部達には口伝として受け継がれているが、真実はかなり違っている。まずムーランティス大陸の事が抜け落ちている。
完全に忘れ去られているのだ。 聖地モスクピルナスは空想上のものとなっている。また、教団の分裂は事実なのだが、それは権力争いでは無い。
平たく言うと色恋沙汰のもつれだ。 四始祖のうちの一人が暴走した結果、抗争に発展し、 追われた二人が大陸を脱出し新たな地で興したのが今の教会の始まりだ。そして、とある事情によりムーランティスは封印された。
***
「な!なんとぉ!そのような真実が有るので御座いますか精霊王様!」
精霊王で通すおつもりですのね・・・
実は「『オタサーの姫』を奪い合っただけの事です」
まぁ!よくある話ですわぁ~。「なるほど、精霊の秘宝を巡る争いだったのだね」
ちょっと違いますわお父様・・・「いえ、彼らの内の一人が『オタサーの姫』なのです」
え?姫と三銃士をセットで転生させたの?
異世界に? 鬼畜ですわぁ~「つまり四始祖様の中でも特別な存在だったと言う事かね」
「その通りです」 「ウォトゥ~サァ~ヌヒュ~メン、特別な存在・・・今、奥義が示された!」床に
「それと大戦など起きていません、精々が村単位での抗争ですね」
それはまた随分と豪勢に盛りましたわね。「『オタサーの姫』は年下の剣士と駆け落ちしました」
おやまぁ・・・いっその事、清々しいですわ。「残された二人は互いを慰め合う内に愛し合う様になりましたが、
飲酒と薬物依存で廃人になりました」真実の愛に目覚めて溺れたのね・・・哀れですわ・・・
「ウォトゥ~サァ~ヌヒュ~メンである始祖様は女性だったのかい?」
そう言う事ですわお父様。「いえ『男の娘』です。」
違いましたわっ!お父様!「オトゥ~クゥ~ヌコゥとは?」
「超越者ですね。」BL祭りでしたわ~~~
この世界にも四季がある。 暦は一年を4節4期で表す。昇節(春分)。 前陽期。 陽節(夏至)。 後陽期。 降節(秋分)。 前陰期。 陰節(冬至)。 後陰期。一期は90日、一週間は10日で、「前陽の3週5日」等と表す。 王都からログアード辺境伯領都アセムまでは馬車移動で約20日の旅となる。 コネリー大司教主席枢機卿、アンドリア王太子を筆頭とする訪問団が到着したのは 前陽の中頃。麦の穂の稔りが揺れる初夏の事であった。***明日から5日間は王都からのお客様を御もてなしするために諸々の授業はお休み致します。 今日はその準備ですの。 もう既にうんざりですわ~「あと何着有りますの?」早朝から十数着と衣装を合わせ、その度に髪型も結い直すものだから首も肩も限界ですわよ! 髪の毛って重たいですわぁ~ おまけに髪飾りデコるからグラグラするのよね。 久々に首が座らなくなりましたわ。 赤ちゃんのとき以来ですわね。 覚えていませんけれど。「三着で御座います。姫様が主役ですもの、 ダモンの威信を賭けてお披露目する様にと大奥様より仰せつかっております」ルルナのコスチュームは、動くたびに見えるパンツと食い込みが問題視されて 卑猥認定されてしまい、ドレスを新調する事になりましたわ。 アニメの設定を引き継いでいるので普段着にも変身できますけれど、 それもヒラヒラのミニスカートでパンツ丸見えですものね。「これは魔法少女ではありません!」 と終始不満げでしたが、ステッキは断固として離さなかったですわね。「若様がお戻りになられるのは一年ぶりで御座いますね。 弟様は遠征に出ておいでだとか」 「フリスタスお兄様は南方で私掠船の討伐任務に就いておられるそうよ」ようやく衣装合わせが終わりましたので、皆でお茶を頂いております。 オルエルトお兄様とフリスタスお兄様は双子の兄弟ですの。 オルエルトお兄様は陸軍に、フリスタスお兄様は海軍へとお進みになられました。 オルエルトお兄様は訪問団の一員ではありませんが、 王太子殿下のお口添えで随行を許されたとの事ですわ。「|南
精霊には幾つかの階位がある。 生活魔法と呼ばれる出力の小さい魔法を受け持つ、いわゆる“精霊”。 状態変化や空間制御などの特殊魔法や、 対象を破壊する攻撃魔法を可能にする“上級精霊”。 さらに限定が解除された魔法を発動できる“特級精霊”が存在する。“魔法”とは言っても、それは物理法則を無視しているわけではない。 極めて高速に辻褄を合わせているのだ。 その処理能力に精霊ごとの差があると言う事である。 どのクラスの精霊と契約が出来るか? それは契約者の法力強度に左右される。 各精霊の能力に見合った親和性が必要なのだ。基本的には先天性のもので、遺伝要因が大きい。 背の高い親から生まれた子が、また長身である確立が高いのと同じだ。 まれに突然変異もあるが、めったに起こるものではない。現状で特級精霊に該当するのは唯一ルルナだけ。 また契約可能な親和性を有しているのもエルサーシアただ一人である。 意図的に操作された突然変異と言って差し支えない。あくまでも現段階では。***帰れませんでしたわ・・・それはもう大騒ぎになりましたの。 お祖母様は気を失われて救護室に運ばれ、お父様は私を庇う様にして抱きしめ、 お母様は「まぁ可愛い!まぁ可愛い!」と連呼しながら小躍りしていますの。 子供達は片隅に寄り集まり小声で囁き合い、大人達が盾となって囲っていますわ。「其方は精霊なのか?」 「はい。私はサーシアの契約精霊ルルナです」両手でステッキを胸の前に持ち小首を傾げてルルナは答えました。 んまぁ~あざといですわ~「人型の精霊・・・こんな事が・・・」お父様はかなり戸惑っておられる様ですわ。 精霊の姿は虫や小動物型が殆どで、せいぜい猛禽類くらいですものね。 大型の哺乳類型も、ましてや人型なんて聞いたこともありませんわね。 次の行動を判断しかねておられます。 お母様は体をくねらせながら、 「まぁ!ルルナちゃんと言うのね!まぁ素敵!お名前も可愛いわ!」 徐々に近づきながら抱きしめるタイミングを覗っていらっしゃいました。このままでは埒が明きませんから私がどうにかしないといけませんわね。「お、お父様・・・お城に帰りとうございますぅ」 「あぁ、そうか、そうだな。うむ、一先ず帰ろう。 母上は・・・いないか
あきらは他人との関りが薄かったせいか性欲は控え目だった。 とは言え時折、間欠泉のごとくに欲情が噴き出す事もあった。 そんな時は惜しみなく散財し、とびきり高級な会員制恋人紹介所に連絡した。 そんな過去が影響したのか、彼女は“性”に関して寛容であった。***「はぁ~楽しみねぇ~、どんな子が来てくれるのかしら?かわいい子が良いわね」 我が事のようにウキウキとお母様がはしゃいでいますわ。「そうですわね」それにつけても胸の谷間が・・・ 我が母ながら艶めかしいお方ですわ。「やはりタチアーナ様は王都で降霊なさるのでしょうか?」お母様のご実家であるチャーフ公爵家。 その嫡男の三女で、従妹のチャーミィも私と同い年ですが、 2歳からずっと王都で暮らしていますの。 貴族にも色々と違いがありますのよ。 爵位の上下は勿論の事、領地の有無も大きいですわね。領地持ちの貴族と言うのは要するに大名ですわ。 領内での徴税権や自治権を持っていますの。 大貴族なら自前の軍隊も編成していますわね。 チャーフ家も領地持ちの大貴族ですのよ! 王国の南、かつてコラゴと言う名の帝国が有った場所ですの。400年ほど前に我が国と戦争が起こりましてね、 ボコボコにされて滅びましたの。 領土は分割されて、戦の功労者に分配されましたのよ。 王妃の従兄弟で司令官だったローベルト伯爵が首都を陥落させましたの。 その功績で公爵位を叙爵されて、チャーフ公爵となりましたの。 チャーフと言うのはその首都の名ですわ。オバルト王国には3箇所に祭壇がありますの。 一つは首都エルベに、もう一つはダモンに、そして最後の一つがチャーフに。 自領に祭壇が在るなんて、そりゃ~もう特別な事ですのよ! 当然チャーフ家は代々そこで降霊の儀を執り行っていましたの。 初期のチャーフ家は軍閥でしたのよ。ところが代が下るに連れて国政に携わる様になって行きましてね。 今ではすっかり官僚貴族ですわ。 代々大蔵省税務長官を務める家系ですのよ。 領軍も小ぢんまりしたものになりましたわ。「そうでしょうねぇ。 イリアムは領地に関心が無いものねぇ。 見栄っ張りなのよあの子は。 昔からそうなの。 あれがチャーフ公爵家の跡取りだと思うと悲しくなるわ。 バロッサはお母様の言いな
その国で生きる人々はその世界を“イ・デアル・アー”と呼んだ。 古代の言葉で“空・大地・海”と言う意味だ。 彼らはそこが惑星であり、球体である事をまだ知らなかった。現段階で認識されている大陸は三つ。最大の面積を持つがその殆どが未踏の地 “エギ・キキル・デアル”。南北に長く湾曲した “ファ・ジンムーラ・デアル“。歪ではあるが円形に近い ”ポーラ・タエタト・デアル“。実はもう一つ大陸が有り四大陸の星なのだが、 誰もその名を知らず、何処に在るかさえも分からない。 一部の地域で”封印されし呪われた大陸”として伝承されるのみである。この世界には“魔法”がある。 精霊と契約し精霊言語を用いて発動する。かつて高橋あきらであった少女は、名をエルサーシア・ダモン・ログアードと言う。 辺境伯家の第三子であり長女となる。 北方のラーアギル山脈一帯に暮らす戦闘民族ダモン。 オバルト王国の北壁を守護する軍閥だ。 王家とは血縁でもあり良好と言える関係だが、どの派閥にも属さない自治独立の気風が強く、 中央の宮廷貴族達からは疎んじられている。さて、 数奇な巡りあわせの糸に導かれた少女は、 この世界でどのような生を紡ぐのであろうか。***なんやかんやで、もうすぐ10歳。 すっかり引き籠りですわよ! 彼女の居ない人生が、こんなに心細いとは・・・ みんなよく平気で居られますわね。 身内以外の者と話なんて出来ませんわよ。部屋から出ると心が不安で一杯になってしまいますの。 屋敷の外へは滅多に行きませんわ。 年に一度、王都へ行く時くらいですわね。 国王陛下との謁見がありますの。 新年の挨拶ですのよ。 我がダモン家は高位貴族ですの。その折りは、お母様のご実家に泊めて頂いて親族の顔合わせを致しますの。 同い年の従妹が居ますのよ。 三姉妹の末っ子。 タチアーナって言いますの。 チャーミィと呼んでいますのよ。長女はアルマーナ、二女はジュリアンヌですの。 上の二人はとても意地悪で、行くと必ず嫌な思いをさせられますわ。 まぁ、子供のする事ですから大したものではありませんけれどね。私が泣けば気が済むようですから、そうして差し上げますの。 でないとしつこ
上も下も無く、右も左も区別出来ず、 前も後ろも存在しない世界に彼はただ居る。見えているのでは無い、聞こえているのでも無い、 感覚せず知覚のみ有る。 死の瞬間や時間の経過など一切不明だ。しかし彼は自分がここに居ると言う自我を認識した。***(僕は死んだ筈だよね?) 『えぇ、死亡しました』(君も居るんだね) 『えぇ居ますよ』(君は誰?神様とは違うよね) 『私が何者であるかと言う質問は初めてですね』(あぁそうだね。居るのが当たり前だったからね) 『親和性の強化が目的でしたからね。申し分のない成果を得ました』(どーゆー事?ちゃんと説明してくれないかな) 『当然そのつもりですよ。今なら理解が出来るでしょう』彼女曰く、 この世の全ては、詰まるところ“情報”であると言う。 情報の本質はネットワークであり、 絶えず流通する事で存在たらしめているそうだ。彼女はネットワークの一部であり、 僕とコンタクトする為のアプリケーションなのだとか。 彼女が言うには人間を含む生物も物質で構成されたプログラムであって、 自覚がないだけで根源的には同じものらしい。情報の収束したものがエネルギーであり、 それの凝固したものが物質であるそうだ。 つまり膨大な量の情報が詰まったパッケージが”物質”なのだとか。本来、情報を操作するのに物理法則は必要ないらしい。 いわゆる“観念”によって情報を操作する世界が根源として存在しているそうだ。 しかし三次元の世界で情報は物理法則の支配を受ける。視覚的情報は光に。 聴覚的情報は分子の振動に。 全ての情報が素粒子の運動に置き換えられて伝わるのだ。 物理法則とは、その情報パッケージを扱う為の規則だそうだ。さぁ~っぱり分かりましぇ~ん! 本来の僕は”中の下”ですよ? さらに理系は”下の下”だよぉ~ん。 でも観念?念力みたいなもんかな? だったら文系になるの? 違う? 何系?彼女の本体である観念世界は予定調和に満たされていて変化をする余地が無い。 つまり流通させるべき情報が無いのだ。 永遠に更新されない情報。 そんなネットワークに存在意義が有るのか?有る訳が無いっ!しかし物質世界を観測する事によって無尽蔵に情報の所得が可能となる。 観念世界と物質世界は共依存の関係だ。
ベージュ色のカーテンが夏の日差しを和らげて程よく室内を照明している。 ホテルの一室の様だが介護ベッドを囲む医療器具や、 時折に来る看護師の足音が病室ですよと告げる。 広い個室を見回しても見舞い品の一つも無い。 この部屋の扉に彼の名札が貼られて半年が経つが、 誰一人として訪ねて来た者は居ない。脳幹に出来た悪性腫瘍だ、治療は不可能らしい。 代理人の弁護士以外は誰にも知らせなかったが、その必要も無かった。 親類縁者とは絶縁している。 父母が健在かどうかさえ知らない。 友と呼ぶ者も恋人も居ない天涯孤独のはぐれ者だ。二十代後半あたりから人付き合いを避ける様になった。 他人との関わりが煩わしい。 人嫌いと言うよりは、必要性を感じなくなったのだ。 ネットの繋がる環境さえあれば事足りる。余命宣告を受けてすぐに手続きをした。 先ずは介護施設への入居だ。 続いて財産の処分に関して法律事務所との契約。 遺言執行者として後始末をして貰う為だ。人格は破綻しているが、金に不自由はしていない。 億単位の遺産も渡す相手の無い泡銭だ。 財団にするには少な過ぎ、さりとて捨てるに目立つ額。 結局は入居施設の所在する自治体に奨学金事業として寄付する事にした。 もし両親が生きていたら、法定遺留分を除いた全額をそれに当てる。 別に善意からでも無い、担当の弁護士が勧めたからだ。 他人の人生になど興味は無い、目の前で子どもが倒れても通り過ぎるだろう。 ろくでなしの自覚は充分にある。 全ての調査と手配は死後に開始する契約とした。 もちろん契約書は公証役場に届けてある。 基本的に人を信用しない。一通りの段取りが整ったのは二月、梅の花の見頃。 見納めと思って最後の遠出をした。 南高梅の産地、和歌山県南部町の南部梅林だ。 ちょうど満開だとの事だが、桜に比べると地味なものだ。 密度が薄いのである。 だがひと枝の清楚な姿は茶人の好む侘び寂びの趣がある。 今の自分にはこの方が良いなとあきらは満足した。そして昏睡状態に陥って三日目。 今日この時、彼の人生は静かに閉じようとしていた。***(大した苦労も・・・努力もしなかったな・・・ 手ごたえも充実感も・・・無いな・・・)『そうですか?それは







