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6話 隠された伝説

Author: おじむ
last update Petsa ng paglalathala: 2026-11-03 07:59:36

この世界にも四季がある。

暦は一年を4節4期で表す。

昇節しょうせつ(春分)。

 前陽ぜんよう期。

陽節ようせつ(夏至)。

 後陽こうよう期。

降節こうせつ(秋分)。

 前陰ぜんいん期。

陰節いんせつ(冬至)。

 後陰こういん期。

一期は90日、一週間は10日で、「前陽の3週5日」等と表す。

王都からログアード辺境伯領都アセムまでは馬車移動で約20日の旅となる。

コネリー大司教主席枢機卿、アンドリア王太子を筆頭とする訪問団が到着したのは

前陽の中頃。

麦の穂の稔りが揺れる初夏の事であった。

***

明日から5日間は王都からのお客様を御もてなしするために諸々の授業はお休み致します。

今日はその準備ですの。

もう既すでにうんざりですわ~

「あと何着有りますの?」

早朝から十数着と衣装を合わせ、その度に髪型も結い直すものだから首も肩も限界ですわよ!

髪の毛って重たいですわぁ~

おまけに髪飾りデコるからグラグラするのよね。

久々に首が座らなくなりましたわ。

赤ちゃんのとき以来ですわね。

覚えていませんけれど。

「三着で御座います。姫様が主役ですもの、

ダモンの威信を賭けてお披露目する様にと大奥様より仰せつかっております」

ルルナのコスチュームは、動くたびに見えるパンツと食い込みが問題視されて

卑猥ひわい認定されてしまい、ドレスを新調する事になりましたわ。

アニメの設定を引き継いでいるので普段着にも変身できますけれど、

それもヒラヒラのミニスカートでパンツ丸見えですものね。

「これは魔法少女ではありません!」

と終始不満げでしたが、ステッキは断固として離さなかったですわね。

「若様がお戻りになられるのは一年ぶりで御座いますね。

弟様は遠征えんせいに出ておいでだとか」

「フリスタスお兄様は南方で私掠船しりゃくせんの討伐任務に就いておられるそうよ」

ようやく衣装合わせが終わりましたので、皆でお茶を頂いております。

オルエルトお兄様とフリスタスお兄様は双子の兄弟ですの。

オルエルトお兄様は陸軍に、フリスタスお兄様は海軍へとお進みになられました。

オルエルトお兄様は訪問団の一員ではありませんが、

王太子殿下のお口添えで随行を許されたとの事ですわ。

「南蛮なんばんバルドーの海賊など弟様の敵では御座いませんね」

マルガリテは事も無げに言うけれど私は心配でなりませんの。

海賊の体裁を取っていますが、帝国の支援を受けた非公式の半軍隊ですわ。

唯のならず者では無いもの。

おそらくは正規の軍人も混じっているでしょうね。

表向きは野良の海賊で通しているから抗議しても無駄ですのよ。

バレバレですのにね。

さても明日に備えて早めにお休みさせて頂きましょう。

女中のエミリとアリスがルルナから剥ぎ取ったフリフリ紐パンツを矯ためつ眇すがめつ眺めていますわ。

履いてみる?クセになりますわよ!

***

遠い昔に4人の精霊の落とし子が生まれ、この世で最初の契約者となった。

彼らは世界中を旅して廻り、精霊の言葉と文字を人の世に伝えた。

彼らの死後、知識と技を受け継いだ弟子達が教団を組織し、

民の救済を掲げたのが精霊教会の始まりとされている。

今、教会の代表としてダモンの地を訪れているコネリー大司教主席枢機卿は、

使命の重さと伝説の再来に立ち会う感動に震えていた。

***

昨日は朝からお城の中央広場で訪問団の歓迎式典が行われましたの。

皆様ルルナとお話がしたいご様子でしたが、

当のルルナが超然と無視するので気まずくなってしまいましたわ。

少しくらいは気を利かせなさいよね!

お母様が上手にフォローしてくれましたから良かったものの、

さすがにお客様に対して失礼ですわよ。

田舎者と陰口されるのは癪ですわ。

午後からは王太子殿下をお招きして、お祖母様主催のお茶会が開かれましたの。

親戚同士のお茶会なので、殿下も寛くつろいでおられましたわ。

「まるで精霊の姉妹のようだね」と殿下が微笑まれると、

気を良くしたルルナが「ラッキーペアーですから」と両手の人差し指を立てて返答しましたわ。

“魔女っ娘ピックル”ですわねぇ~

ゆびゆび立ててマハーロのターマリでフーランペですわぁ~

夜は舞踏会が開かれましたが、その前に私はお暇いとまさせて頂きましたの。

ここまでで4度の衣装替えで5着のドレスをクリアしましたのよ。

初日を戦い終えたメイド戦士たちが互いの健闘けんとうを讃え合っていましたわ。

今日からは午前と午後に一組ずつ、お父様同席の上で会談が行われますわ。

一番手は精霊教会の大幹部との面会ですわね。

交渉事はお父様にお任せすれば宜よろしいので、私は可愛らしく微笑んでいれば良いわね!

と甘く考えておりましたが・・・

「単刀直入に申し上げます。公女様を教会にお預け頂きたく存じます」

え?私に出家せよと?

「娘を差し出せと申すかっ!」

元陸軍中将だったお父様の射殺すような眼光に当てられて、大司教様の顔から血の気が引いていきますわ。

わ、私も身震いするほど見惚みほれてしまいますわ!

「話をっ!話をお聞き頂きたいっ!公女様の為なのです!」

まるで命乞いをするような勢いで大司教様が言い募つのりましたわ。

「申してみよ!」

完璧なマウントですわお父様!

位では相手のほうが格上ですけれど、戦場を潜り抜けた迫力ですわね!

「今からお話するのは教会の秘中の秘、決して口外なされませぬ様お願い致します」

大司教様は緊張して手が震えておられますわ。

「承知した」

むっとしながらも只ならぬ様子にお父様は身構えておられますわ。

凛々りりしくて素敵ですわぁ~

大司教様たっての願いにより人払いがなされ、三人のみでの密談となりましたわ。

「これで良いであろう。では秘中の秘とやらを聞こう」

陣中じんちゅうで床几しょうぎに腰を据える将軍のようなお父様が、

大股開きで腕組みしておられますわ。

あぁお父様・・・もう・・・

もう私・・・

お股が・・・お股が・・・

「この事は教皇猊下げいかと枢機卿団のみが知る封印されし真実の歴史、

四始祖様の契約精霊は人型だったので御座います」

祈りを捧げる様に両掌りょうてのひらを胸に当て話を始める大司教様を遮さえぎり、

「落とし子の事ですね?あんなのと私のサーシアを一緒にしないで下さい」

と突然ルルナが言い放ちましたわ!

いきなりそんな“私の”だなんて~

もうお茶目さんなのだから~

私のルルナは~

「やはり!やはりご存じなのですね!あぁ・・・伝説が・・・」

大司教様が涙ぐんでいらっしゃいますわ。

お年を召された方に泣かれると虐待している様で心が痛みますわね。

加害者扱いされたらたまったものではありませんわ。

「四始祖様は救世主では無いのかい?詳しく聞かせて貰えないだろうか」

打って変わって包み込む様な優しい眼差しでお父様がルルナに問いかけましたの。

その微笑みは私だけのものでしたのに・・・

まぁルルナなら許してあげましょう。

さぁルルナ、お父様がご所望しょもうですのよ!

話して差し上げてね。

「彼らは人型精霊との契約を可能とする為に用意された器でした」

おやぁ?

もしや転生者ではありませんこと?

「特別な器と言う事なのかい?」

「ある程度の条件は有りますが、特別と言う程ではありませんよ」

「そ、それはどの様な条件で御座いましょうや!」

あまり興奮なさいますとお体に障さわりますわ大司教様。

「貴方が知る必要は有りません」

「も、申し訳御座いませぬ。どうかお許しを・・・精霊王様」

あら?いつの間に精霊王になったの?

***

教団は四始祖達が自ら組織し、当時からかなりの規模であった。

富と権力を手中にした彼らは互いに反目し、

やがて凄惨せいさんな派閥抗争となり果て教団は分裂した。

王侯貴族を巻き込んでの大戦となり、世界は暴力に覆われた。

争いは果てしなく続くかに思われたが、四人の内二人が手を組み、

他の二人を討伐した事で収束した。

再び統一された教団は精霊教会と名を改め、二人は初代の教皇と大司卿に就任した。

その死後、教会を受け継いだ高弟達は、徹底して事実を隠し歴史を書き換えた。

数千年の時の流れに削られて人々の記憶から真実は消えた。

教会の最奥を除いて。

と言うストーリーが幹部達には口伝として受け継がれているが、真実はかなり違っている。

まずムーランティス大陸の事が抜け落ちている。

完全に忘れ去られているのだ。

聖地モスクピルナスは空想上のものとなっている。

また、教団の分裂は事実なのだが、それは権力争いでは無い。

平たく言うと色恋沙汰のもつれだ。

四始祖のうちの一人が暴走した結果、抗争に発展し、

追われた二人が大陸を脱出し新たな地で興したのが今の教会の始まりだ。

そして、とある事情によりムーランティスは封印された。

***

「な!なんとぉ!そのような真実が有るので御座いますか精霊王様!」

精霊王で通すおつもりですのね・・・

実は斯々然々かくかくしかじかとルルナが説明しましたの。

「『オタサーの姫』を奪い合っただけの事です」

まぁ!よくある話ですわぁ~。

「なるほど、精霊の秘宝を巡る争いだったのだね」

ちょっと違いますわお父様・・・

「いえ、彼らの内の一人が『オタサーの姫』なのです」

え?姫と三銃士をセットで転生させたの?

異世界に?

鬼畜ですわぁ~

「つまり四始祖様の中でも特別な存在だったと言う事かね」

「その通りです」

「ウォトゥ~サァ~ヌヒュ~メン、特別な存在・・・今、奥義が示された!」

床に跪ひざまずき感涙に咽むせび泣いている大司教様・・・

夢を壊さない方が宜しいわね。

「それと大戦など起きていません、精々が村単位での抗争ですね」

それはまた随分と豪勢に盛りましたわね。

「『オタサーの姫』は年下の剣士と駆け落ちしました」

おやまぁ・・・いっその事、清々しいですわ。

「残された二人は互いを慰め合う内に愛し合う様になりましたが、

飲酒と薬物依存で廃人になりました」

真実の愛に目覚めて溺れたのね・・・哀れですわ・・・

「ウォトゥ~サァ~ヌヒュ~メンである始祖様は女性だったのかい?」

そう言う事ですわお父様。

「いえ『男の娘』です。」

違いましたわっ!お父様!

「オトゥ~クゥ~ヌコゥとは?」

「超越者ですね。」

BL祭りでしたわ~~~

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